『二宮翁夜話』第1巻 第12章
翁曰はく道の行はるるや難し…
原文
翁曰はく、「道の行はるるや、難し。道の行はれざるや、久し。その才ありといへども、その力なき時は行はれず。其の才、その力ありといへども、其の徳なければ又行はれず。其の徳ありといへども、その位なき時は又行はれず。然れども是は、是れ大道を国天下に行ふの事なり。その難き、勿論なり。然れば何ぞ此の人なきを憂へんや。何ぞ其の位なきを憂へんや。茄子をならするは、茄子作り、能くすべし。馬を肥やすは、馬士、能くすべし、一家を斉ふるは、亭主、能くすべし。或いは兄弟、親戚、相結んで行ひ、或いは朋友、同志、相結んで行ふべし。人々、此の道を尽くし、家々、此の道を行ひ、村々、此の道を行はば、豈に国家興復せざる事あらんや。」
『二宮尊徳全集』第36巻を底本とした。ただし、次の方針に基づき、本サイトの管理人が独自に修訂を施してある。◆漢文以外は、すべて横書きに改めた。◆旧字体は、新字体に改めた。◆仮名遣いは原則として旧仮名遣いのままとしたが、現代的な文語文法に基づき、適宜修正した。(例:飢へ→飢ゑ、全ふ→全う)◆送り仮名、句読点、括弧、改行は、現代的な感覚に即して大幅に改めた。(例:譬ば→譬へば、曰……→曰はく、「……。」) ◆振り仮名は、推測に基づき、適宜施した。◆助動詞および助詞は、仮名に開いた。(例:也→なり、如し→ごとし)◆「ゝ」や「〱」は原則として元の仮名に戻し、「〻」は削った。◆漢文には適宜訓点を補った。
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