『二宮翁夜話』第1巻 第14章
翁曰はく大事をなさんと欲せば…
原文
翁曰はく、「大事をなさんと欲せば、小さなる事を怠らず勤むべし。小積もりて大となればなり。凡そ小人の常、大きなる事を欲して小さなる事を怠り、出来難き事を憂ひて出来易き事を勤めず。夫故、終に大きなる事をなす事あたはず。夫れ大は小の積んで大となる事を知らぬ故なり。譬へば百万石の米と雖も、粒の大きなるにあらず。万町の田を耕すも、其の業は一鍬づつの功にあり。千里の道も一歩づつ歩みて至る。山を作るも一簣の土よりなる事を明らかに弁へて、励精、小さなる事を勤めば、大きなる事、必ずなるべし。小さなる事を忽せにする者、大きなる事は必ず出来ぬものなり。
『二宮尊徳全集』第36巻を底本とした。ただし、次の方針に基づき、本サイトの管理人が独自に修訂を施してある。◆漢文以外は、すべて横書きに改めた。◆旧字体は、新字体に改めた。◆仮名遣いは原則として旧仮名遣いのままとしたが、現代的な文語文法に基づき、適宜修正した。(例:飢へ→飢ゑ、全ふ→全う)◆送り仮名、句読点、括弧、改行は、現代的な感覚に即して大幅に改めた。(例:譬ば→譬へば、曰……→曰はく、「……。」) ◆振り仮名は、推測に基づき、適宜施した。◆助動詞および助詞は、仮名に開いた。(例:也→なり、如し→ごとし)◆「ゝ」や「〱」は原則として元の仮名に戻し、「〻」は削った。◆漢文には適宜訓点を補った。
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