『二宮翁夜話』第1巻 第16章
翁曰はく多く稼いで銭を少なく遣ひ…
原文
翁曰はく、「多く稼いで銭を少なく遣ひ、多く薪を取りて焚く事は少なくする、是を富国の大本、富国の達道といふ。然るを世の人、是を吝嗇といひ、又強欲と云ふ。是れ心得違ひなり。夫れ人道は自然に反して勤めて立つ処の道なれば、貯蓄を尊ぶが故なり。夫れ貯蓄は、今年の物を来年に譲る、一つの譲道なり。親の、身代を子に譲るも、則ち貯蓄の法に基する物なり。人道は、言ひもてゆけば、貯蓄の一法のみ。故に是を富国の大本、富国の達道と云ふなり。」
『二宮尊徳全集』第36巻を底本とした。ただし、次の方針に基づき、本サイトの管理人が独自に修訂を施してある。◆漢文以外は、すべて横書きに改めた。◆旧字体は、新字体に改めた。◆仮名遣いは原則として旧仮名遣いのままとしたが、現代的な文語文法に基づき、適宜修正した。(例:飢へ→飢ゑ、全ふ→全う)◆送り仮名、句読点、括弧、改行は、現代的な感覚に即して大幅に改めた。(例:譬ば→譬へば、曰……→曰はく、「……。」) ◆振り仮名は、推測に基づき、適宜施した。◆助動詞および助詞は、仮名に開いた。(例:也→なり、如し→ごとし)◆「ゝ」や「〱」は原則として元の仮名に戻し、「〻」は削った。◆漢文には適宜訓点を補った。
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