『二宮翁夜話』第1巻 第36章
某氏事をなして過ぐるの癖あり…
原文
某氏、事をなして過ぐるの癖あり。
翁諭して曰はく、「凡そ物ごとに度と云ふ事あり。飯を炊くも、料理をするも、皆宜しきほどこそ肝要なれ。我が方法も又同じ。世話をやかねば行はれざるは勿論なれども、世話もやき過ぐると、又人に厭はれ、『如何にして宜しきや分からず。先づ捨ておくべし』などと云ふに至るものなり。古人の句に『さき過ぎて是さへいやし梅の花』とあり。云ひ得て妙なり。百事、過ぎたるは及ばざるにおとれり。心得べき事なり。
翁諭して曰はく、「凡そ物ごとに度と云ふ事あり。飯を炊くも、料理をするも、皆宜しきほどこそ肝要なれ。我が方法も又同じ。世話をやかねば行はれざるは勿論なれども、世話もやき過ぐると、又人に厭はれ、『如何にして宜しきや分からず。先づ捨ておくべし』などと云ふに至るものなり。古人の句に『さき過ぎて是さへいやし梅の花』とあり。云ひ得て妙なり。百事、過ぎたるは及ばざるにおとれり。心得べき事なり。
『二宮尊徳全集』第36巻を底本とした。ただし、次の方針に基づき、本サイトの管理人が独自に修訂を施してある。◆漢文以外は、すべて横書きに改めた。◆旧字体は、新字体に改めた。◆仮名遣いは原則として旧仮名遣いのままとしたが、現代的な文語文法に基づき、適宜修正した。(例:飢へ→飢ゑ、全ふ→全う)◆送り仮名、句読点、括弧、改行は、現代的な感覚に即して大幅に改めた。(例:譬ば→譬へば、曰……→曰はく、「……。」) ◆振り仮名は、推測に基づき、適宜施した。◆助動詞および助詞は、仮名に開いた。(例:也→なり、如し→ごとし)◆「ゝ」や「〱」は原則として元の仮名に戻し、「〻」は削った。◆漢文には適宜訓点を補った。
前のページ
次のページ